2008年9月6日(土)

[思索]"「ウェブ2.0」はなぜ、もうからないのか"はなぜ、ムカつくのか

あの勝間さんともあろう人が、こんなことを書いている。

http://it.nikkei.co.jp/business/news/index.aspx?n=MMIT2n000001092008

儲からないポイントとして、以下の3つをあげている。

(1)他のメディアに比べたときのコンテンツの質の低さ

(2)ビジネスモデルの成熟度の低さ

(3)参入障壁の低さ

読んでいて、だんだんムカついてきた。何でムカついてきたのか、まとまらないかもしれないけれど、ちょっと書きなぐってみる。

Web2.0の質は低くない

「他のメディアに比べたときのコンテンツの質の低さ」。これはまったくの誤りだ。たとえば例に挙がっているYouTubeにアップされているコンテンツだけでも、うまく抽出すれば民放のくだらない番組よりは、はるかにすばらしい番組を作ることができる。

例えば食べ放題レストランを想像してほしい。1000円で食べ放題だったとしよう。しかし、そこにある具材は、原価の安い、不健康なジャンクフードばかり。確かに、おなかいっぱいにはなるが、味も質ももの足りず、少なくともお金に余裕がある人は、またそこにリピーターとして来ようとは思わないだろう。

ちがう。ぜんぜん違う。

たしかに原価の安いジャンクフードが多いし、毒の入った食品だってたくさんある。しかし100年に一度しか味わえないようなメニューだって膨大に存在する。とにかくそのレパートリーがすごいのであって、ジャンクフードしか見えないのは、その圧倒的な量の前に見る人の目が追いついていないだけだ。

ある程度お金に余裕が出てきた社会人層は、残念ながら時間の方が貴重になるため、無料コンテンツにアクセスしたり、あるいは自身がコンテンツの提供者になったりするような余裕はなくなるのである。

これもちがう。「時間」=「金」という思考がすべてになってしまっている人か典型的に陥りやすいパターン。

まず、検索なんかしなくたって、大量のコンテンツから効率よく自分に必要な情報だけをピックアップする方法がいくらでもある。できる人はすでに情報収集のために多種多様なサービスを使いこなしている。

次に、将来の自分の価値を高めたいのであれば、時間を割いてでもコンテンツの提供者とならなければならない。Web2.0は自己表現の場であって、そこから始まる人と人のつながりが、将来の自分の価値を決めることになる。その価値は「金」ではない。それぞれの個々人の自己実現がそこにはある。金は付随的なものとして後からいくらでもついてくる。

人を動かす、人を感動させるものは「金」ではない。Web2.0は金では動かない。Web2.0を支配したければ人を動かさなければならない。その「人」が動いて初めてそこに経済の営みが生まれる。そこから金儲け「だけ」をしたい人はうまいビジネスモデルを考えていればいいが、それはWeb2.0の本質からはかなりかけはなれたものになるだろう。

広告モデルがなかなか成り立たないことがある。なぜなら、まずコンテンツの質が低いため、お金はないが時間があるようなタイプのユーザーを引きつけがちで、有料コンテンツである雑誌や新聞に比べ、トラフィックの割に広告効果が低いのである。

これはまったく意味がわからない。まず広告モデルがなかなか成り立たないのならGoogleはとっくにつぶれている。本当に広告効果が低いの? そして、コンテンツの質が低いわけではないし、雑誌や新聞の発行部数と、トラフィックなんて比較対象にならない。

そして、「抜本的な問題」という参入障壁について。

技術的なハードルが低いうえに、次々に新しいテクノロジーが出てくるため、先行者利益があまり効かないのである。

それはそうなんだけど、それはWeb2.0に限った話ではないから、Web2.0「が」儲からない理由ではまったくない。抜本的でもなんでもない。

で、何がムカついたんだ

たぶん、以下の2つがその理由。

無料コンテンツ提供者がないがしろにされた

すばらしいコンテンツはすでに自分の一生をかけても消費できないぐらいに存在している。しかしそう見えないのは、ただ単純にそのコンテンツにたどり着けないほどに大量のコンテンツが目の前にあふれかえっていて、相対的に質が薄まっているように感じるからだ。

それを一律に「質が低い」と決め付けるのは、コンテンツ提供者に対する侮辱に他ならず、後にでてきたかもしれない質の高いコンテンツを生むきっかけを潰してしまう可能性がある。これは危険だ。

すべてを「金」の物差しで計った

「なぜ、もうからないのか」というタイトルだから、最後は金の物差しで計ってもいいけれど、コンテンツの質が低いから金が取れないというのはちっと即物的すぎやしないか。

優れたコンテンツが「金」を生むわけでもなく、「金」が優れたコンテンツを生むわけでもない。

優れたコンテンツが生まれるかどうかは、それを創造しようと思う「動機」があるかどうか。その動機は「金」だけではない。その動機は人それぞれなので、その動機をうまくコントロールするファシリテーターが必要で、優れたファシリテーションの結果生まれたコミュニティ・場の「文化」が、思いもよらなかったすばらしいコンテンツを生み出すきっかけの大きな要因となる。

だから、最低でも、Web2.0によって生まれるコミュニティの価値に対して金の物差しで計る考え方ぐらいはしてほしいよな、と思う。

疑問

そもそも、Web2.0企業って、儲けようと思っているんでしょうか。「世の中を少し変えられた」ことが大きな報酬になってたりしませんかね。

「どうやって収益を上げるんですか」って聞くと「これから考える」って反応をするCEOがあまりにも多すぎます。そんなことよりも知名度や、感謝や、賞賛のほうが気になるんじゃないでしょうか。

私がWeb2.0な企業のCEOになったらきっとそうだな。とりあえず衣食住+αが保障される収入があれば、それでいいって思ってしまいます。

そして

勝間さんのコンテンツは基本的には好きです。いろいろ気づきも得られるので。これからもがんばってください。